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「マビノギ英雄伝」リアルなアクションの弓使いは難しい? 日本での実装も待たれる新キャラクター“カイ”の開発経緯

日付:2012-04-26 21:34:23    アクセス回数:1337次

 2012年4月24日,韓国・ソウルで開催されたゲーム開発者向けカンファレンス“Nexon Developers Conference 2012”(NDC 2012)において,「マビノギ英雄伝」に関するセッションが行われた。韓国で人気を博している弓使いの新キャラクター“カイ”について,企画担当とプログラマの2名により開発経緯が語られたので,その内容を紹介していこう。

「マビノギ英雄伝」新キャラクター「カイ」

 

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弓使いのキャラクターの新天地を切り開く

マビノギ英雄伝でカイの企画を担当したイム・ドックビン氏
 最初に登壇したのは,「マビノギ英雄伝」の企画チームに所属するイム・ドックビン氏だ。“弓使い”というコンセプトのキャラクターを新たに設計するにあたり,企画者の立場から,外見と能力のそれぞれで苦労した点が語られた。

 カイの外見を決める際は,マビノギ英雄伝が世界各国でローンチされていることを考慮したとのこと。というのも,地域によって好まれるキャラクター像が大きく異なるのである。例えば,欧米のゲーマーには,筋肉質のカロックの人気が非常に高いものの,青年風のリシタはそれほどウケなかった。一方,アジアの各国ではリシタの人気が高かったりする。世界中のどの地域でも満足させられるキャラクターを作り出すことは,ほとんど不可能に近いという結論に至ったそうだ。

そこで視点を変えて,カイの外見を決める際は“誰にも拒まれない”ことを念頭に置いたという。映画「ロード・オブ・ザ・リング」のレゴラスに代表されるハンサムタイプを望む声も強かったとのことだが,欧米などのニーズもまんべんなく考慮した結果,「タフな中年男性」に決まったのである。

カイの体型に関しては,今後追加されるアバターアイテムの開発コストを抑えることも踏まえて,リシタをベースに若干肩幅を広くするなどのアレンジを加えていったとのこと。これまでのモデリングなどの資産を流用することで,開発コストや納期といった条件をクリアし,そのうえで新しいものを作り出すことに大きく貢献できたという。

一方,弓使いとしてのアクションを企画する際は,試行錯誤の連続であったそうだ。既存のゲームでイム氏の納得できる“弓使い”のアクションというのは,「The Elder Scrolls V: Skyrim」で弓を引き絞ったときの緊張感のある動きを除き,ほとんど存在しないとのこと。それだけに,弓使いのキャラクターとして新天地を切り開きたいという強い思いがあったそうだ。

 ところが,実際に弓使いのキャラクター開発に携わってみると,この作業が想像以上に大変だったことを痛感したという。まず,モンスターとの距離が離れているため,打撃による爽快感の演出が伝わりにくいのだ。もし,相手が離れていてもそれらが分かるようにオーバーアクションにしてしまうと,途端にリアリティが薄れてしまう。
 イム氏は,プログラマと共にこの問題に取り組み,弓矢がヒットした瞬間に“ボーンを揺らす”など,地道な作業を重ね,違和感のない演出を積み重ねていったそうだ。

そういった弓使いのアクションにこだわるのと同時に,プレイヤーの操作を難しくさせないことにも気を配ったという。マビノギ英雄伝はアクションRPGであり,FPSやTPSと比べてライトな人でも楽しめるようにしなければならない。例えば,シビアな照準合わせ(エイミング)が必須になってしまうようでは,マビノギ英雄伝というタイトルにはそぐわない操作性となる。かといって,ターゲット式のように必ず当たるようではアクション性が損なわれてしまう。
 この問題について検討した結果,照準合わせに関しては,自動で補正してくれる“ショートボウ”と,プレイヤーが手動で行う“ロングボウ”の二つから好きなほうを選べるようにしていったという。

そのほかにもさまざまな難題があり,弓使いという遠距離タイプの方向性で満足のいくアクションを実現することの大変さが身に染みたとイム氏は語った。

 また,そうやって四六時中開発に没頭していると,自分では客観的な判断が行いにくくなってしまうとイム氏は警告する。氏は,なによりも大切な「遊んで面白いこと」の実現を心がけるべく,QA(Quality Assurance:品質保証)チームからのフィードバックはとくに重視していたそうだ。


遠距離攻撃タイプのキャラクターで苦労した打撃感の演出

また,カイのモーションが自然に見えるようになったあとは,打撃感が薄いという問題に直面することになる。これは企画チームのイム氏も述べていた項目だが,遠距離攻撃で見映えよく,しかもオーバーアクションにならずに演出を高めていくことは,プログラマにとってもかなりの難題だったそうだ。

 例えば,弓矢が相手の“手”に命中した際は,そこから振動がボーンを伝わって,“肘”や“肩”を自然に動かしたり,ダメージの量に応じて画面を揺らす幅を変えたりしていった。また,弓矢がヒットした瞬間にモーションを一瞬止める演出(ヒットストップ)は,オンラインゲームとして避けられないタイムラグの対策も行える,スマートな手法だったとのことだ。

普段は遠距離で戦っていくカイだが,それだけにモンスターの上に飛び乗っての“フィニッシュコンボ”にはこだわったという。これに関しては,一連のフィニッシュコンボの動作を,「敵へのジャンプ」「頭上に乗り上げる」「頭に攻撃して降りる」の三つのモーションに大別したという。
 例えば「100フレーム目から頭上に乗り上げる」などといったキーフレームを設定することで,ある程度の大きさのモンスターなら共通して行えるようになった。モンスター個別のモーションを作らずに済み,大いに助かったそうだ。

カイの開発にはこのようにさまざまな苦労があったわけだが,韓国では実装するやいなや,大反響で受け入れられており,ほっと胸をなでおろしているという。

日本での実装に関しては,過去のインタビューでも語られているが,今から待ち遠しいプレイヤーも多いのではないだろうか。実際にカイで遊ぶ際は,今回の講演内容を頭の片隅に置いておくと,より楽しめるかもしれない。

 

 

 

 

>>http://www.4gamer.net/games/038/G003866/20120425032/

 

 

 

 

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